兄弟の葛藤と執着と。ひとつのクッキーから全てが動き出す。
せんみつさんの作品です。せんみつさんの絵柄がすっごくすっごく大好きでして・・・・ダリアでも読んでいたのですが紙で買ってしまいました(〃ω〃)電子書籍ではまだ配信されていないようですね。
今回は兄弟モノのストーリー。個人的には義兄弟モノが好きなのですが・・・・血のつながった兄弟モノの作品も楽しく読めました。今回は本当に血のつながりのある兄弟モノですのでそういうのが苦手な方はご注意くださいね。
コミックス情報&評価
彼と嘘と弟と (ダリアコミックス)
フロンティアワークス (2016/7/22)
評価項目 | 評価・★ |
---|---|
絵柄 | ★★★★★ |
ストーリー | ★★★★☆ |
エロ | ★★☆☆☆ |
独自性 | ★★★☆☆ |
彼と嘘と弟と/内容紹介
片想いをしている、7つ下の弟に――。
律には7つ年下の弟・連がいる。母と浮気相手の間の子だと父に疑われていた連は、寂しさからか幼い頃から律に懐いていた。
そんな律を甘やかしつつも、誰にも言えない片想いを連に抱いていた律は、いっそ兄弟でなければ…と心の奥底で思ってしまう。
似ている男と寝て気持ちを誤魔化す律だったが、家族と上手くいっていない連と一緒に暮らすことになる。
そんな時、律の初恋の相手でもあり、連の本当の父親かもしれない奥井と再会し――…。
彼と嘘と弟と/感想は以下より。ネタバレ注意。
Contents
- 彼と嘘と弟と 1話~4話
- 彼とホントとりっちゃんと
- あとがき
カバー下のストーリーとかを合わせたらおそらくP165くらいでしょうか。
このコミックスの主要な登場人物
発売中のDaria6月号で「彼と嘘と弟と」最終話、載せていただいております~。 pic.twitter.com/kPOTH1tNvC
— せんみつ・7/22「彼と嘘と弟と」発売 (@sentomittu) 2016年4月23日
先生のツイッターです♪書影と同様、左側が兄、右側が弟になっています。
律(兄)7つ下の弟にずっと恋をしている。初恋は連の父親だった。連からはりっちゃんと呼ばれている
連(弟)大学生だったが、辞めてパティシエになると言い出す。父親に冷たくされていたせいなのか、律にすごく執着している。
奥井連の実の父親。律の初恋の相手。
【ネタバレ注意】彼と嘘と弟と 感想
7つ年下の弟への恋心、そして初恋
恋の話はしない
初恋も こじらせてる片想いも
誰もわかってくれないって知っているから
今回のストーリーは、主に兄である律視点のストーリーでした。ずっと弟に恋してしまっていることへの背徳感、そして葛藤。
わりと秘密主義なのですよね律は。律は自分と連が半分しか血がつながっていない事をかなり前から知っていてずっと隠していました。これは・・・自分の「初恋」にも関係しているからだと思うのですよね。
あの日・・・家から出てきた男の子。
その子に「秘密だよ」と言われもらったクッキー・・・。それが律にとっての初恋の味。その後に生まれた連は、律の父親に冷たくされるのですよね。
律は連の目にかつての彼と重なる部分をみつけ、律の父がどうして連に冷たくするのかを察するんです。
そして、かつてときめいた「彼」の目と同じ目をした自分の弟に・・・
俺は二度目の初恋をしたようだった
初恋って初めての恋だから「初恋」と言うのですが、どうして「二度目」なのに「初恋」って書いてあるのだろう?と思ったんです。
ここは要は連と以前恋した彼とを重ねているからこその表現なのかな?と思います。また同じ相手に恋したようなそんな感覚なのかな?と。だからこそ「二度目の初恋をしたようだった」ってなっているのかなと思いました。
もらわれてきた子だったらと誰よりもそう願っている
今回のストーリーでは、律の葛藤がよく読み取れました。連に恋しているけれど、弟という事と連はゲイではないという事とで気持ちにブレーキをかけている律。
そして律が快楽を求める相手も「連」にどこか似ているところを重ねているというのもなんだか切ない。
1枚のクッキーから物語が大きく動く
連が大学をやめ、パティシエになりたいと言い出しました。
そして会社では・・・同僚の女性からのおススメのクッキーを出されそれを口にした律は・・・
そのクッキーは21年前の味を思い出させた
初恋の味によく似たクッキー・・・。律はそのお店に行き初恋の相手を見つけます。
こっからストーリーが一気に動いていきます。
隠していても、惹かれ合う運命ってあるのでしょうかね・・・。パティシエになりたいと思っている連は実の父親である奥井さんのお店で働くことになるんです。。。同じ目で見つめ合う2人がすごく印象的。
お互い何も知らないから余計に切ないですね・・・・。知っているのは律だけだという(;゚Д゚)
律は知っているからこそ、連にあれこれ言っちゃうのですが逆に連はそれが気になって仕方なくなって奥井さんと律との関係を疑ってしまいます。律はただただ事実を知られなように、連を守らなきゃと思って動いていただけなのですが。
連の執着
律の片想いでストーリーが進行していくのですが、読み手からしたら連も好きなのだろうなぁと思う場面は色々とあります。とはいえ・・・それが「愛」とか「恋」とかそういう「好き」なのかは微妙だったりするのですよね。
執着しているのはすっごく執着しているんです。ただ、連の執着は「兄弟」としての律に執着しているようにも思えるのですよね。
俺はもっと濃いものが欲しい
誰といても希薄なんだ ずっと・・・・
このセリフはきっと律の父親から冷たくされ、ずっと自分は拾われた子じゃないか?と思ってきたからこそのセリフでしょうね。だからこそ余計に「兄弟」として血のつながりのある律に執着しているのだと思います。
他人には興味がないのも、人一倍「血のつながり」に執着しているからなのかもしれません
俺とりッちゃんは誰よりも濃いんだ
同じ血が流れてるんだから
連が血に執着すればするほど律は辛くなっていくのが良くわかります・・・。律は連に恋しているから他人だったら良かったと思っている節があるし、兄だからそばに居られるという諦めもあるの。
だから奥井さんに迫っちゃうんですよね。連とはどう転んでもうまくいかないから「連に似た奥井さん」を代わりにしたいと・・・。連の事を忘れられないからこそ、連と重なる奥井さんを好きになりたいと思ったのだと思います。
ちょっとここら辺は、もやっとする人もいるかもしれませんね。
でもワタクシは思うのですよね。連とは血のつながりがある・・・だからこそどうしようもない。奥井さんは?
連と同じ目をしている奥井さんは・・・律とは血のつながりがないのです。二人が恋仲になっても連のように「兄弟」とかで悩まなくてもいい・・・そう思ったら律の行動は納得できるなぁと。
とにかく律は連が好きなのですよね。でもそれは「兄弟」だから自分から動いたりはできない。でも誰といても「連」と重なる人じゃないとダメなくらい連が好き。それなら・・・奥井さんは「好きになれたら」律の背徳感を減らす相手にはなるでしょうね。
連と奥井さん
連が奥井さんに敵意むき出しっぽい場面はちょっとクスってなりました。
りっちゃんは俺だけの兄キですから・・・
ほんと連は顔に似合わず独占欲が強いというか、、、執着しているというか。だからこそ余計に律の辛さがよくわかるのですよね。
でも今まで「兄に対して」の気持ちだと思っていた連が「好きな人」というのに気が付く時が来ます。
きっかけは・・・奥井さん(笑)
奥井さんがパティシエになった理由を聞き、自分と重ねる連。同時に「好きな人」という言葉に律を重ねます。
奥井さんが父と知る時
職場でも、従業員から「声や風貌」が似ていると指摘される二人。奥井さんはだんだんと考え込むようになります。
そして連から「器用だから父親に嫌われていた事」や「子供の頃 本当にもらわれてきたか橋の下ででも拾われてきた子」じゃないかと思ってたと言われた奥井さんは、自分と連の関係を話してしまいます。
りっちゃんと俺はさ 思ったより濃くないみたいなんだ・・・
恐らくさらっと読むとそこまでなんでこだわってるんだろ?と思う人いると思うのですよね・・・。
それでも何度か読むと連は人一倍血のつながりにこだわりと持っている事が分かります。父親の件が大きいでしょうが、子供の頃からいつも自分の味方でいてくれた律と必要以上に結びついていたいという気持ちが大きいのかもしれません。
だからこそ、半分しかつながりがないと知ったときの衝撃は大きかったと。
嘘を明かすとき
終盤、奥井さんが父親だと知った連。連は律は自分の事を弟だと信じてくれているのに、半分しかつながっていないと知ったらどう思うだろう?と不安になります。
ですが・・・律はここでちゃんと今までウソをついてきたことを話すのですよね。
ずっと嘘をついていた
本当はお前が父さんの子じゃないって昔から気づいてた
いっそのこと、他人だったらよかったと、それなら恋人になれたかもしれない。。。と。
でも周りから見たらどんな形であれ(血のつながりがどうでも)やっぱり兄弟だし、兄弟で愛し合うのは難しい。
そう思っているのに俺はお前を諦めきれないという律。
ずっとずっと好きなんだとここで連に告白します。連はというと・・・・あれほど血がどうのこうの話して落ち込んでいたのですが律の告白ですっごく嬉しそうな顔をします。
そしてりっちゃんが辛いなら一緒にここ(橋)から落ちようと・・・。律は連を茨の道に巻き込むのが辛いと言うけれど、連は律がいないことの方が辛いと言います。
抱き合う2人を見て・・・・なんだかいたたまれないような奥井さん(笑)
でも奥井さんは奥井さんなりに2人の事を理解して応援してくれるようでちょっと良かったです(n*´ω`*n)
幸せな日々
確かに茨の道かもしれません。でもでも応援してくれる人もいる。何より・・・もう気持ちを隠さなくても良くって、好きな時に好きな人を抱きしめることができる・・・。
そんな変化に自然と律も連も穏やかな気持ちになったような気がします。
描き下ろしはキュン甘
描き下ろしはすごく良かったですね。エロもありますが、基本的にせんみつさんのエロはあんまりエロくはないです。さらっと流れる感じでしょうか。。。
それでも仕草やセリフがすっごくキュン。両親の離婚前、家には存在していないかのような扱いだと言う連には「俺だけは味方だ」と言った律。その時の連は後ろから律を抱きしめて「りっちゃんが兄キでマジでよかった・・・」と言うんです。
後ろから抱きしめているので律の顔が見えない、どんな顔をしてるのと不安になる連。。。連は昔なら律は抱きしめてくれてたのに今は抱きしめてくれないと感じていたのですよね。それは自分が背が伸びたから?それとももう子供じゃないから・・・?と。
でも今は、正面から抱き合える。連にもやっと安心できるようなつながりができたのでしょうね。
背中越しだと不安で仕方なった頃とは別に、背中越しで顔が見えなくても幸せだと実感できる・・・そんな連の気持ちがすごく伝わってきて温かくなるようなそんな描き下ろしでした。
奥井さん
カバーしたは奥井さんと2人でした。面白かったです!
奥井さん・・・・・2人の大事な相談相手になるかもしれませんね!そして・・・奥井さんがアレを持ち帰るとは~。
奥井さんにも幸せが訪れますように!とあとがきに先生が書かれていましたが・・・激しく同意!いつかちょこっとでも読めたらいいなぁ~。
まとめ
兄である律が弟のためにずっとウソをつき続けてきたストーリー・・・・。そしてウソを明かした時二人がより結ばれた展開はすごく良かったと思います。設定的にはやや重い設定だとは思うけれど、展開的にはさらっと読む事ができます。
読後感も悪くはなく、2人が笑っていたり照れていたりでかわいいなぁ~と思いました。
登場人物に嫌な人が出てこなかったというのも、このコミックスを読みやすくしていると思います。3人に焦点がピシッと当たっているのでテーマもわかりやすかった!設定のわりにはドロドロ感はなし!です。
兄弟ものでもどかしいなぁと感じる部分もありますが、「兄弟ものおっけー」という方はぜひ読んでみてください。
電子書籍