早寝電灯さんの【化け猫かたって候】BLコミックスの紹介&感想です。こちらはアンソロジーCannaで連載していた作品。
雑誌掲載時から面白くて注目していました。
心理描写がやはり素晴らしいなと思う早寝電灯さんの作品。いつも読んではじわりとなるので、すごく大好き・イチオシな作家さんです。
初めて読んだのはBookLiveで目にとまった【半壊の花】。この中の【稲穂に帰る道/つづく道】でズキュンときてしまいまして。そこから作家買い。
出ている作品ほぼ読んでると思います(*^_^*)
今回の【化け猫かたって候】もすごく不思議な作品。不思議なのに・・・終盤に向かっての展開は胸をぎゅ~~~っと鷲づかみにされるような感覚に。
そして読後はほのぼのあったかい。今作もまた素敵な作品でした。
【化け猫かたって候】作品紹介
コミックス
作家 | 早寝電灯 |
出版社/レーベル | プランタン出版/Cannaコミックス |
発売日 | 2020/3/28 |
満足度・オススメ度 |
内容紹介
内容
「今日からあんたは俺の伴侶だ」社蓄リーマンの草太は、疲れきった家路で座りたくなり、近くの寄席へ入る。講談の迫力に引き込まれていくも、何故か講談師が化け猫に見えてきて――!?化け猫の存在を知ってしまった草太に、化け猫・喜八は結婚を強要!喜八と同棲生活をするはめに。だが彼との生活は意外にも、疲れた草太の心身を癒やしてくれ、草太は喜八に惹かれていく。二人には、圧倒的な寿命の差があるのに……。化け猫×リーマンの異種間結婚BL
登場人物
作品のテイスト・設定
- ファンタジーBL
- 切ないけどあったかい
ファンタジーBLなのでここで好みは分かれるかも!?しれませんが、少しかわったお話が好みの人は読んでみてほしい!!!
注意ポイント
【ネタバレ注意】【化け猫かたって候】感想
未知との出会い
今回のお話は化け猫と人間のお話。
主人公の草太は心身共に疲れ果てるような日々を過ごしていた。そんな時ふと立ち寄った寄席で講談を聴く。
そこには男が講談する姿が。聴いているうちに、ふと高校生の頃に小説を書いていて楽しかったことを思い出す草太。
そして・・・話しているその男が一瞬猫に見えたので草太は驚きます。
講談会が終わったあと、人に呼び止められるも・・・振り向けばまた化け猫が。ここで草太は倒れてしまいます。
目を覚ますと、化け猫に見えた講談師の家にいました。
彼は姿を隠そうともせず、自分は化け猫だと草太に伝えます。
ただ、その姿は通常では見えないもの。よっぽど草太と自分は相性がいいのかと化け猫は言い・・・
その化け猫の名前は【喜八(きはち)】。
彼は、人間にも社会があるように、化け猫にも化け猫社会があるのだと言います。そこには絶対的な掟がいくつもあると。
- 人にバレてはいけない
バレれば制裁だという。でもこれはバレた方だけではなく、化かされなかった方も制裁が加えられるのだとか。
それを回避する方法は・・・
生涯の誓いがあること
「今日からあんたは俺の伴侶だ」
そう言われた草太ですが・・・一度は断るものの、結局は喜八の手をとることに。
ここから奇妙は同居生活が始まるという展開。
最初は特に恋愛的な要素はないのですが、実は喜八が出会った日に草太が気になった事などがあとから出てきます。
読み進めると、二人ともまっすぐな所はあるのですが、不器用なのですよね。。。その不器用さがまたいいのですが(*^_^*)
違った景色
疲れ果ててた草太は、喜八と出会ったことで色々と変化していきます。
その前に・・・過労も重なって脳の血管切れたとか( ゚Д゚) 喜八が助けてくれたから良かったですが・・・
個人的には喜八が草太に言ったセリフがぐっときました。
「生きるために働きな 働くために生きるんじゃないよ」
これは本当にそうなのですよね・・・いつから・・・どこからその目的が逆転してしまうのか・・・。
使命感の強い人ほどこの傾向は強いのかなって思います。
喜八が言ってるの。自分が語るのはフィクションだが、お前の人生はノンフィクションでしかも1回こっきりだと。
ここを読んだ時にちょっとズキっとくるものがありました。もっともっと人生を楽しまなくてはと。
苦しくなったときに少し立ち止まってこういう言葉を思い出したいなって思います。
早寝電灯さんの作品はこの作品に限らず、セリフが胸に響くのですよね・・・おっと・・・セリフだけではなくモノローグも!
一読めは流れを掴むために読んで・・・二度目はセリフをしっかり読んで欲しいと個人的には思ってます。
草太も喜八との事があって、色々と考え方が変わっていきます。考え方が変わったら・・・今まで見えてた景色が違ってみえる。
こういうのって大事。
夫婦の契り
化け猫社会の掟に則って、喜八と草太は契約を結びます。
化け猫さんたちも個性豊かで面白かったです♪化け猫流の結納って言って草太を猫に変えたり。
草太は・・・キジトラなんですね(*^_^*)
皆に受け入れられる草太ですが、ここで喜八の事を聞かされます。
喜八の講談は【鍋島の猫騒動】というもの。
人が化け猫を殺すお話で、これは化け猫たちには嫌がられる話なのだということ。
物語というのはいつも誰かにとって都合がいいお話なのさ
誰かにとっての英雄譚が 誰かにとっての悲劇だと気がつく人はどれくらいいるんだろうね?
物語とかいつも一方的な主観で読んでしまうので・・・こんな感じで違う視点から物事を考えると逆になるのか・・・とはっとさせられたセリフです。
どうして喜八が化け猫なのに、化け猫が殺されてしまう話を語ってるのか理由は・・・作中にきちんと出てきます!
注目して読んで欲しい。
二人の違い
お互い惹かれあってるのに・・・喜八は草太に何れ解放してあげると言います。
それを聞いて、どうして最初にそれを言ってくれなかったのかと気持ちが混乱してしまう草太。
それもそのはず・・・草太は好きになってしまってるの。
いつか喜八の家を出て行かないといけない、彼とも離れなければいけないとすごくショックを受けます。
そして草太の出した答えは・・・・
今までありがとうございました、と書き置きを残し喜八の元を去ること。
それを知った時の喜八の焦り具合は良かったですね!!!キュンってなりました。
しかもここで喜八の方が草太に一目惚れしたとわかって・・・( ´艸`)
バレて生涯の誓いを結ぶまでは良かったのですが、喜八自身も草太に好意があったから最初にいつか解放してやれると言えなかったのですよね。。。
草太を解放するつもりだったのに、彼がいなくなったことで必死に探すとか(≧∇≦*)
だけどね、喜八がどうしてずっと一緒にと考えなかったのか理由があります。
二人には決定的な違いがあるの。
それは・・・寿命。
化け猫は長生き。草太は人の寿命で早くに亡くなってしまいます。
置いて行かれるのがすごく怖いと感じたから、手放そうと考えてたようです。
でも結局は・・・手放せないのですよ。喜八自身、草太に心動かされてるから。
怖さこそが原動力に
家出した草太ですが、喜八の夢を伝う事ができる能力で居場所を探知されます。
終盤でやっと二人がお互いの気持ちを本音で話せたのかなって感じました。
残される方は怖いものね。
だから喜八の気持ちもよくわかります。
怖いという喜八に草太は言うの。
化け猫を見た時は怖かった、もし喜八が(短命であることが)怖いと感じてるならずっと怖いと思ってて欲しいと。
よく見てみたら怖くなくなるかもしれないから、それまで怖いままでいてって。
どういう意味なんだろうな~って思ってたらね、ここはちゃんと次のお話で書かれていました。
終わりがいつになるのかわからないのは怖い。でもその恐怖こそが明日はそこにあるはずだと手を伸ばす原動力になるのだと。
だから草太は喜八に、その怖さに耐えて欲しいって言うの。
でも人生何が起るかわかりませんからね!
ラストの百鬼夜行で桔梗さんが見せてくれた二人の姿は。。。なかすごく希望があるような気がしました(*^_^*)
仲良しの二匹にちょっとぐっときてしまいましたヨ。
人間の寿命が尽きたあとも二人は一緒にいると信じたいですね!
喜八と出会ったことで、忘れかけてたワクワクするものに再度挑戦する草太が、すごく印象的な終わり方でした。
まとめ
描き下ろしは二人の初夜が(≧∇≦*)
もうね~もっと読みたかった!でもこの終わり方が色々想像できて好き。
喜八にうんと甘やかされて気持ちよくされてる草太が想像できました♡
喜八は溺愛攻ですね( ´艸`)
読後はほっこり。二人はきっと仲良く暮らしていくのだろうな・・・(*^_^*)
この1冊は230P超えというかなりのボリュームです。だからこそすっごく読みごたえありますヨ。
ファンタジーもので内容的には化け猫が軸にあるので、BL的には心理的な結びつきでどこから気持ちが変わった!?っていうのはわかりにくいです。
でも、現実でもここからが恋愛としての気持ちだよね!ってわからないですよね。
自然に変化していったのだなと、それが個人的にはすごく上手に描かれていたのではないかと思います。
BL要素としてもっとはっきり!と思う人も中にはいるかもしれない。だけど、この自然さがむしろみどころだと個人的には思います。
草太がラストに「今度は自分の物語を書こうと思う」と文字を書き出したところで終わってるのですが、草太(&喜八)の物語は今はじまったところ。
これからの二人が幸福でありますように、、、というか幸せな二人しか思い浮かばないです。
描き下ろしでそれを補完させてくれるからすごくいいまとめだったなと思います★
素敵なお話なので興味があれば是非!!!!
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