池玲文さんの【兄ちゃんの話】を読みました。
こちらは雑誌「ihr HertZ」2014年1月号、3月号、5月号に掲載された『兄の話』を改題し、描き下ろしマンガ8Pを追加した作品です。
面白かったぁ~感動もするし、ちょっと切なくもなるし。でも、ラストはほんとほっとしてうるっともくる。
すごい作品だなぁって思ってしまいました。
池玲文さんってコメディ作品から超シリアルもの、むちゃくちゃ激しい任侠ものまで描かれるからほんとスゴイ。しかも絵もきれいで細かくて好きなのですよね(*^_^*)
ほんとあのすっごく上手な絵で「8人の戦士」とか(笑)思い出すだけでクスクスと笑ってしまいます。
オススメなのは超シリアスで超ヤクザものだけど一途で甘さもある【媚の凶刃】。そして笑いたいなら【8人の戦士】。ほろっとしたいなら今回の【兄ちゃんの話】かな!と。
【兄ちゃんの話】作品紹介
注意ポイント
【兄ちゃんの話】感想レビュー
これはたくさんの人に読んで欲しい作品かも。むちゃくちゃ面白かったしイチオシ。
家族のこと、自分のこと、いろいろな事が描かれていて主人公は「兄」なのだけれど視点は弟。これがまた・・・客観的に描かれることによってより感情移入してしまうの。
すごい作品だなって感心してしまったのですよね。
この弟視点というのは、林らいすさんの【兄は元彼】で読んだ事があるのですが、第3者視点というのはかなり好みの描き方なのかも。
【兄は元彼】もお気に入りなのですよね。
話を戻して・・・この【兄ちゃんの話】は短いのにとっても内容が濃い。何でもできて優しい兄。
そんな兄が同性愛者だと知り、最初は戸惑う弟がラストは誰よりも味方になってくれるのが素晴らしかった。弟のセリフには泣けてしまってそこはみどころ。
僕を育てたのははっきり言って兄である
まずはどれだけ【兄】がスゴイのかが冒頭から書かれています。
家族は四人。寝たきりの祖母と看護師の母、そして【兄】と自分。お父さんは離婚していない。
忙しい母に変わって兄は祖母を介護しながら家のこともし、そしていつ勉強していたのか学校の成績も優秀という自慢の兄。
実質は彼が自分を育ててくれたのだと弟は感じています。
そんな兄が中学に入ってから仲の良い【なな君】を家へ連れてくるようになります。
彼は弟である史嵩も仲良くしてくれていい子なのですが、兄は自分となな君が仲良くするのを嫌がったと。
この辺りは嫉妬かなと思って微笑ましくなります。
でも・・・このとき家を出た史嵩は忘れ物をして一旦家に戻ってくるの。そして見てしまうのですよね。
自慢の兄となな君がキスしているのを。
その光景は・・・子供の史嵩にショックを与えてしまいます。
なんだか裏切られたような気持ちになったようです。大好きな自慢の兄。。。小学生の史嵩が男同士のキスをどこまで理解しているのかは最初はわからなかったのですが、途中で一応理解しているのがわかります。
ただ、裏切られた気持ちというのは、男同士というよりは自慢の兄に大切な人ができたショックの方なのかな?と個人的に。
二人のキスを見てからというもの、兄をよくよく見ると態度はわかりやすかったと史嵩は感じます。
兄は健気でとてもなな君の前だとかわいいのですよね!!!わかります。
でも史嵩は・・・そんな兄とは逆でなな君が苦手になってしまったようです。兄を好きな気持ちが大きければ大きいほど、そうなるだろうな~って思うので納得。
ましてや男。モテるはずの兄がどうして男と?という気持ちを持っても不思議ではないのかなと。
弟の気持ちに共感しやすい
とはいえ、弟の感情というのはわからなくもない。
むしろ理解できてしまうのがこの作品の面白いところ。何でもできてモテるはずの兄がどうして男であるなな君を選んだのだろう?とか・・・
悪いことをしてるって思っているからこんなに頑張っているのだろうか?とか、そういう視点が子供らしいけれどわかってしまうという(^_^;)
色々な事を考えるのは、史嵩自身も納得したいと心のどこかで思っているからなのですよね。
兄が大好きだから。
このとき史嵩はなな君を避けていたようで、兄に問い詰められるのですが「なな君が遊びにくるの嫌じゃないよ」と言ったときに「ごめんな、ありがとう」と兄から言われ、史嵩が反省する場面があります。
小学生でそんな兄の事を考えて反省できる子ってそうそういないよ(T^T)と史嵩が愛おしくなりました。
史嵩はあれから二人が別れたらいいとさえ思ってたみたいですね。でもその考えが変わってよかったです(T^T)
ちなみに・・・兄となな君はラブラブです。この二人は読んでても応援したくなるカプ。
結婚したくなったりしないでね?
なな君と兄とのシーンですごく好きなところがあって。
それは・・・高校生の時のシーン。
ブライダルスタッフとしてバイトをしている嵩大になな君がよっかかって「結婚したくなったりしないでね・・・?」って言うの。
このなな君が超かわいいのなんのって!!!
そんななな君の手を嵩大がぎゅっと握って「俺はいつかお前に結婚してもらおうと思ってるけど」って赤面しながら言うの。
このシーンとっても好き。
なな君の表情もいいし、嵩大の表情もいい。
本当にそうなればいいなって応援したくなってしまいます。こういう青春時代というか・・・希望を持ってる二人が切なくもなるし甘酸っぱいなって。
これから大人になっていくに従って、辛いことも増えてくるしうまくいかない事だって味わってしまうと思うけど、叶えてほしいと読みながら強く思いました。
兄の変化
兄って書いたり嵩大って書いたりで申し訳ないです(^_^;)
仲良しななな君と嵩大ですが、二人に変化が現れます。それは・・・嵩大の祖母の死から。
嵩大は無口になり、そしてなな君も家に来なくなったと史嵩は振り返ります。
このときよくわからないなと思った事がありまして。
このときの史嵩は中学生だと思うのですが・・・そう考えると史嵩中1の時は5歳上の嵩大は高3だと思うのですよ・・・。
でもバイト三昧の兄に「来年受験生なのに」って言っていて。どういうこと!?!?ってなりました。これは嵩大は高2設定なのでしょうか?
ひっかかったけど、まぁちっちゃなことは気にしない★
でもね、このとき史嵩は気付いたようです。いつも頑張って気を張ってる兄が、なな君の前では嬉しそうにしたり拗ねたりしたり。そんな彼を見るのが好きだったと。
小学生の時はなな君の存在を疎ましく思ってしまった史嵩ですが、成長して兄にはなな君が必要なのだと思うようになったのかな!?とちょっと読んでて嬉しかったです。
このあと、どうして嵩大が変化したのかがわかります。
やはり祖母の死が関係していました。おばあちゃんが亡くなった時、嵩大はほっとした自分が許せなくなったようです。
葬儀の時に泣いたのも、悲しいという気持ちよりも開放感から涙が出たのだと。
そんな自分に嫌気がさして、なな君に嫌われるかもしれない嫌われたくないと思って会えなかったみたい(T^T)
いい子なんですよねやっぱり。開放感から泣いたっていいじゃないって思うけど、それが許せなかったのかな。
頑張って介護していた人ならば、「死にたい」ともう聞かなくても済むって思っても不思議じゃないし、ほっとしたと口にしても誰も文句は言わないと思うのに。
それを聞いた後のなな君もまたいい子でね。ここは読んでてホロっときてしまいました。
なんでも一人で抱えこむ嵩大には、なな君は必要だなってすごく感じました。。。
兄の話
史嵩が大人になってからの話が入ってきます。そこから母に兄となな君の関係がバレた時の回想がありました。
まず、大人になった史嵩は大事な人ができたようです。そして彼女と結婚したいと思い、彼女(他人)にはじめて兄の事を話したとありました。
成長した嵩大がこれまたイケメンで(*^_^*)渋くなってた~!!!史崇もイケメンだけれど幼少期の雰囲気そのまま残っていて素敵★
史嵩が選んだ女性はかなりいい子で、兄がゲイだと知っても動じず。むしろ動じたのは彼らの母だったようです。
回想でわかるのですが、母は大反対。
嵩大が男の人をスキになった理由をあれこれこじつけているのですが・・・。
そして言うのですよね。「良い子に育ってくれたと思ってたのに」って。これに史嵩が泣いて怒るの。
このシーンは思わず涙ボロボロでてしまいました。史嵩の言ってる言葉がグサグサきたというか。
母親の気持ちもわかるけれど、弟のこの純粋な気持ちがなんだかとても突き刺さって痛かったです。
嵩大にはなな君が必要だとすごく感じてはいるけれど、史嵩も必要。ほんと純粋でいい子だなって思いましたよ。史嵩の必死さがまた泣けました。
あれから嵩大・なな君は・・・別れるという選択はなくて一緒にいます。母とも関係良好なようですよ!
それも史嵩のセリフが母を動かしたのではないかなと。
ラストの締めくくりもほんとすごく素敵なのでぜひ多くの人に読んでほしいなと思います。
なな君相変わらずキラキラしてた(*^_^*)
感想まとめ
その他、なな君・嵩大のなれそめや、二人の絡みだったりが描かれていました。どちらも必見!
良かった(*^_^*)なな君攻×嵩大受か~これもポイント高し!!!
なな君みたいな柔らかいふわふわした王子様系の攻最高です。抱かれてるときの嵩大も可愛かった★
後半はなな君視点で描かれているのも良かったです(*^_^*)
とても素敵な作品で、すごく感情移入できたなぁと。
面白いのでぜひ気になった人は読んでほしいと思います。
電子配信のみで紙書籍はありません。
池玲文さんの作品にしてはエロは後半のみ。なので初心者さんにも読みやすい作品です★
これが3チケで読めるとは。単話でうわぁ~というのを3チケで読んでスマホを放り投げそうになったときもありますが、この作品は「3チケ」というのが安く感じてしまいました。それほど面白かったし内容がぎっしり。
こういう作家さんが増えて欲しいですね。エロ特化は特化で楽しいからいいのですが、読ませるBLマンガだったなぁと改めて。