ウノハナさんの新刊。時代が引き起こす別れと再会。変わらぬ2人の想い・・・本格昭和ロマン譚です
※10月30日UPの記事に追記で書いたものです!いやぁね・・・もうね読んだあとの余韻がすごい。なんて面白いストーリーなんだろう?
本当にストーリー展開が素晴らしいです。
【銀座ネオンパラダイス】作品紹介
作者名 | ウノハナ |
出版社/レーベル | 日本文芸社/花恋コミックス |
発売日 | 2015/10/29 |
満足度 |
私の大好きなBLコミックの仲間入りです。ウノハナさんが特別好きだというのもありますが、本当に素晴らしい!!!犬と欠け月も好きですけどやはり時代モノとなるとぐっと感情移入してしまいますね。
ではでは今回の作品紹介です。
内容紹介
東京の片隅で、葵は戦争から戻らない幼馴染を待っていた。
それは出征の前夜、ただ一度だけ身体を重ねた男(ひと)でもあり…。
ところがその鷹彦が突然目の前に現れて…!!
相変わらずのワガママさで葵をあきれさせるが、人を引きつける力も昔と同じ。
そして役者になるという夢に向かって少しずつ変わろうとする鷹彦に、葵は秘めていた恋心を止められず…。
痛くても、苦しくてもお前とともに生きたい--お前は俺を照らす光、俺の生きる理由だから。
- 絵柄 ★★★★☆
- ストーリー ★★★★☆~★★★★★
- エロ ★★★☆☆
感想にネタバレ含みますのでご注意を!
【ネタバレ注意】銀座ネオンパラダイス 感想
舞台は終戦後の昭和23年
主人公の見目葵と郡司鷹彦とは幼馴染。作中では戦後3年経った昭和23年から始まり、過去と現在が行ったり来たりします。
この時代背景に「戦争」と「戦後」が関わってくるので難しいストーリーになるのではないかなと思ってました。
でもさすがウノハナさんですね。
惹きつけられるストーリー展開で、「生きる光」というものをテーマにされていたのではないかと思います。
「戦争」があったから別れ、「戦争」がきっかけで変わろうと思い、
「戦後」であるから新しくスタートできた。そんな2人のストーリーだったなぁと思います。
そしてそんな2人はお互いがお互いの生きる光なのだと・・・。
終始、葵に感情移入してしまって大変でしたが、何が何でも生きて帰りたかったという鷹彦のシーンでは思わず涙・・・。
葵と鷹彦
ストーリーがまとまっててよかったなぁと思うのは、登場人物が必要以上に多くないこと。
鷹彦と葵に焦点がしっかりと当てられているので読み手としてもあれれ?これ誰?っていうのが全くない。
過去のストーリーもと切れ感がなくてより現代の2人の関係性が引き立てられてていいです。
葵がなぜアメリカ人と仕事をしているのか。
英語が勉強したい葵を応援していた鷹彦。
やりたいことは胸張ってやれ!という鷹彦は男らしくていいですね~。
でもそんな鷹彦も実は葵が必死に読んでいる本たちに嫉妬していたりとか(〃▽〃)
そして道楽息子の鷹彦の帰る場所・・・それが葵であってこれは変わりなく揺るぎないというのがまたね・・・
女遊びもするし酒、タバコもする。それでも鷹彦にとっては葵が特別な人だったというのがわかります。
そして葵もそう。
最初は大学の学費援助してくれた「郡司」の恩返しのために鷹彦の世話役みたいなことをしていた葵ですけど、いつしかそれが愛に変わっていってます。
女に振られては自分のところへ戻ってくる鷹彦に安堵感を覚える葵が切ない。でも・・・なんて強い男なんだろうと私は思いました。
3年ぶりに会い、「お帰り 鷹彦」と涙を流していう葵がなんとも健気だなと・・・。
待つことってすごくすごく忍耐のいることだし、ましてや死んでいるかもしれない鷹彦を変わらず家で待っていた葵。
本当に幸せになってよかったなぁと2人で笑いあえてよかったなぁと思うばかりです。
2人の夢
葵は英語に触れる仕事をしていますが、鷹彦は役者になってました。
役者になったのも戦争で出会った亡くなった戦友の奥さんに遺品を持ってきたことがきっかけ。
それでも役者に楽しさを見出した鷹彦。
指図されるのが嫌いな鷹彦は色々と納得いかないこともあるんですけどね。葵に早く出ているのをみてみたいと言われてちょっと喜んじゃっている鷹彦とかめちゃくちゃかわいいです。
きっと鷹彦も役者として花開くでしょうね。また一流の役者になった鷹彦も見てみたいなぁ~。
赤紙が来た時・・・
この時の2人のストーリーが私には印象深いです。
青年男子にとっては徴兵はビクビクだったでしょうね・・・。
だけれど戦争真っ只中になるとそんなことも言ってられないし、ましてや終戦間近だと日本は劣勢になり徴兵も頻繁に。かなりの数の赤紙が出されたと聞きます。
鷹彦には招集かからないと思ってた葵だけれど現実は無情にも鷹彦のもとにも赤紙が送られてくるんです。
その時に震えながら「名誉な事じゃないか・・・」という葵に「世話かけたな」という鷹彦。
生きて帰ってくるから待っていて欲しい、という鷹彦に自分だっていつ招集がかかるかわからない。と葵はいうのだけれど戦地には行くなという鷹彦。。。
葵は賢いから戦地に行かぬような仕事を任されるだろうという。
お前がいなきゃ俺はどこに帰ったらいいんだ?
切実な鷹彦の願いでもあるんでしょうね。戦地に行くな、自分の帰る場所はお前のところだとそう言って葵が生き抜くことを切に願っているようなそんな言葉と私は受け取りました。
そして2人ははじめて結ばれるのですが、その結ばれ方も胸が張り裂けそうになります。
戦地に行く前に女の所へ行こうとする(葵の言葉なので実際はどうかわからないけど)
俺じゃダメか?俺が女の代わりになる
どんなことでもするから・・・という葵に
誰が 代わりになんか抱くかよ・・・っと言って葵を抱く鷹彦。
ここで私の好きな「口開けろ」が~キタ━(゚∀゚)━!
翌日が別れだと思うとなんとも切なくてそして綺麗な描写でしたね・・・。
鷹彦の気持ちを知ったとき
葵ってほとんど最後のほうまで鷹彦が自分のことを好きでいるというのを知らなかったようですね。女のところへ行くのが常だった鷹彦ですから当然といえば当然でしょうか。
鷹彦の戦友の奥さんだった小百合さんから、自分のところに鷹彦が訪ねてきた時の話を聞く葵。
鷹彦は傷を負いながらも戦友の形見を小百合さんに渡そうとやってきました。
その時に倒れ看病してもらったのが小百合と鷹彦の出会いであり共に役者を目指すということで、手を取り合う存在になったんですよね。(小百合さんは多分マネージャーみたいな感じ)
鷹彦は鷹彦で東京に帰っても葵が所帯をもってるかもしれないし、こんな情けない姿を見せても泣かせるだけかもしれないといって会えなかったらしい。
それを聞いて、それなら役者になってその人に会った時に嘘でも平気な顔して笑ってられるようになりなさい、と小百合さんが言ったのが始まり。
そして鷹彦の想い人が男だったとは知らなかったと言われる葵。それは俺じゃないというけれど、生死をさまよっている時に鷹彦はずっと「あおい」という名を口ずさんでいたようです。
そしてそれを知って鷹彦にもきちんと「もう待ちたくない」と伝えることができ、2人はちゃんと結ばれるんですね。
葵は報われないと思っててずっと鷹彦を待ってたのだろうかとなんか切なかったですが、ちゃんと気持ちを確かめ合うことができて良かった・・・。
帰ってきてくれてありがとう・・・
抱き合いながら鷹彦の体の傷に気が付く葵。どれだけ戦地が過酷なものだったのか・・・そして抱かれながら自分の痛みも嬉しい「生きている」という喜び。
どんな痛みでも生きているからこその痛み。それを噛みしめている2人の描写がギュ~ってなります。
鷹彦は戦地に向かう前、最後に葵を抱けたので思い残すことはないと思っていたけど、必死に生き抜いてきたこと、そして帰ったらまた銀座のネオンを浴びて葵の手を引いて遊び歩きたいと、つよく願ってここまで来れたということでした。
やはり何かを強く願っている人は強いのかなと。
戦地でも葵を思い浮かべて必死で生き抜いてきたかと考えたら胸が熱くなりました。
そして葵の方も、自分の仕事に対し、いろいろな人からイヤミ言われたりされても「いつか鷹彦が帰ってくる」それだけが支えて頑張ってこれたと言います。
鷹彦の待っていろというのが葵にとっては生き抜く原動力だったのですね。
お互いがお互の存在に生かされていたということでしょうか・・・。
傷を触りながら
鷹彦 お前は俺にとって銀座のネオンなんだ
明かりがなけりゃ道に迷って蹲ったまま
どこに向かっていいのかわからない
鷹彦からのキス・・・葵からのキス・・・ここでお互いの気持ちをしっかり確かめたのかなと思いました。
帰ってきてくれてありがとう
もうね涙腺ずっとゆるみっぱなしで大変でした。
帰ってきてもお帰りとは言ってたけどね。このありがとうは本当に本当に言葉が重い。
葵にとっては生きる希望ですからね。どんな形であれ、どんなことをしてでも戻ってきてくれた鷹彦に対する感謝。。。
すごく胸が熱くなった言葉でした。
お前は俺のもんだからな
こういう俺様発言大好きです。しかも誰にも指一本触れさせん!ときましたかぁ~
自分は遊び歩いているのに葵はダメなんですって~。自分勝手ちゃんですよね。
おれは亭主関白だぞ~~~~~~~~~~~てかわいすぎる(笑)この言葉に対し、後ろでそっと「ああ わかってるよ」って言ってる葵がもう健気すぎる。
でもね、鷹彦も大好きで仕方ないんですよね。あの道楽息子くんが葵のために真面目になるよって言うんですから!!!
それでも笑いながらお前はそのままでいいよなんて言ってる葵はすごいなぁと。
でも葵は昔から鷹彦のそういうところも含め好きだったのですよね。眩しいというか。ギラギラとした街がよく似合う鷹彦がなんだかんだで目を奪われ、愛おしく思えるんでしょうね。
俺様だけれど人を引きつける才能を持っている鷹彦。それはスクリーンの中でもそう。
脇役だけれど人の目をひきつける何かを持っているんですよね。鷹彦は役者としてきっと成功すると思って読んでました。
鷹彦がいなかった間
色を失っていた俺の世界のように灰色で
そんな白黒の画面が まるで天然色に見えるなんて
どうかしてる
鷹彦の初出演を見て涙を流す葵。ここ大好きです。当時はモノクロなのですよね映画も。
そのモノクロの世界だけれど鷹彦がいることで色が見えると。これは葵の人生も色がついたということですよね。
待っている間はどこにも行き場がなくてただただ待つ日々。葵も死んでいるかもしれない、でも帰ってくるかもしれないと毎日どんな気持ちで鷹彦を待ち続けていただろう?
そんな鷹彦が今目の前にいる・・・どれほど幸せなことか。
葵の世界が一気に色づくというのもわかるので私はこのモノローグ好きです。記者に囲まれた鷹彦が葵の手を取って「逃げるぞ」っていう顔がたまらなく好きですねぇ。
手を引かれ走っていく2人の未来は明るい。そんな終わり方でした。
<まとめの感想>
そういえば作中に葵の職場のアメリカ人が出てくるのですが。。。見事なまでの当て馬というかほんと当て馬にもなってないような感じですけど出ています。
鷹彦がちょっとした嫉妬するのはかわいかったですね。俺様が嫉妬するとか本当大好物でして・・・。
ウォルター中尉に「いつもウチの葵がお世話になってます」っていう時の鷹彦の顔がたまらんです。
もう俺のモノだから手出しすんじゃねーぞみたいな。
コミックもなかなかの厚さで本当に読み応えのある1冊でした。
2人がいつまでも仲良く暮らしていってくれたらいいなぁ~。またどこかでこの2人の話が読めると嬉しいなと思います。
案外役者になってからの鷹彦とか出てくるかも・・・。とにかく葵の健気さがほんわかと胸を暖かくする物語だったと思います。
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